Monday 9 January 2012

ホップマン・カップ2012雑感 チェコ優勝 フィッシュ&ディミトロフひと悶着 大会存続の危機?

今年は地元オーストラリアをはじめチェコ、フランス、スペイン、アメリカ、デンマーク、ブルガリア、中国が参加して行われたホップマン・カップ。試合の感想等です。

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今大会は勝ち星がディ・ウー(中国)から挙げたシングルスでの1勝に留まったレイトン・ヒューイット。左足親指の痛みはまだ残っているとの話ですが、今週はシドニーに出場。1Rでヴィクトル・トロイッキ(セルビア)と対戦。

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ジャミラ・ガイドソワは今回がホップマン・カップ初出場。豪代表としての晴れ舞台、となるはずが、vs バルトリ戦ではダブルベーグルをくらいゲームセット間際には目に涙を浮かべる有様。結局シングルスでは1勝も出来ず、ほろ苦いデビューとなりました。

正直、これまで彼女にはいい印象を持っていなかったのですが、vs メディナ-ガリゲス戦でも相手の粘り強いプレーに混乱、第3セットにはあからさまに「私、どうしたらいいの!?」という風な不安げな表情を見せたりするガイドソワに、いつの間にか「しっかりしなさい!」とか応援してしまっている私でした。「年かな?」と感じたお正月。

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タイのエキシビ出場のため遅れて会場入りした世界No.1キャロライン・ウォズニアッキは、パースに到着するやいなやマテック-サンズとのシングルスに臨む強行軍。試合開始直後はマテック-サンズにリードを許すも、その後復調しストレートで勝利。

クヴィトワ戦では敗れましたが、今年こそグランドスラム優勝なるか?

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意外に存在感を示したのがデンマークの236位、フレデリック・ニールセン。28歳のベテランで、おじいさんがデンマークでただ一人ウィンブルドンで決勝に出たプレーヤー、という由緒正しいテニス一家出身。今週は自分よりずっとランクの高い選手ばかりに囲まれながら、フィッシュからは第1セットを奪取。vs ベルディヒ戦でも果敢にリターンダッシュを試み、ウィナーを決めると力こぶを見せつける等、飄々としたキャラクターで観客を魅了。楽しい人でした。

これまでの賞金総額は30万ドル弱という彼が、今大会は出場料だけで4万5千ドルを獲得。大会中のインタビューでは

「来週僕は現実に戻って”Joe Nobody”になるけど、今はここで全ての瞬間を楽しんでいる。素晴らしい大会だ」

と語ったとか。

Hyundai Hopman Cup (Official Mixed Teams Competition of the International Tennis Federation) :: News

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リー・ナは自分のシングルスは3戦全勝。ミックスダブルスでも10歳年下で経験の浅いディ・ウーを笑顔でフォローする優しさを見せていました。

vs メディナ・ガリゲス戦後のインタビューでは、自分が18本のフォアハンドウィナーを打ったことを知らされ、

「このところフォアの強化に力を入れてきたから、うちの旦那がいい仕事をしてるってことね」

と得意の夫いじりも忘れず。

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リー・ナのペアは422位のディ・ウー。ウーは08年、全豪ジュニアダブルス準々決勝で守屋宏紀&バーナード・トミッチ組と対戦。試合は中国ペアが勝って、「中国の男の子にこんなに上手い子がいるのか。これは将来が楽しみだ」と感心したものでしたが、今回シングルス、ミックスダブルスともに全敗と、20歳の彼にとっては厳しい洗礼に。

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今月末に出産を控えているアリシア・モリックが初日の客席に姿を見せたとか。

Mum-to-be Molik courtside - The West Australian(画像あり)

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昨年後半は早期敗退が目立つ等、失速気味のフェルナンド・ヴェルダスコ。試合中、彼のベンチの足元に丁寧に並べた彼のスポンサー、ハーバライフのサプリメントの瓶が画面に大写しになっていました。同社はソムデフ・デバーマンとも契約する等テニス界に触手を伸ばしているようなのですが、検索すると他のキーワードに

「ハーバライフ悪徳商法」
「ハーバライフマルチ」
「ハーバライフ被害」
「herbalife詐欺」

等穏やかでない候補が出てきてびっくり。これだけでは同社が悪徳業者かどうかは分かりませんが、世知辛いこのご時世、法的にグレーな企業が接触してくることもあるでしょう。選手の皆さんはくれぐれもお気をつけ下さい。

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アナベル・メディナ-ガリゲスは、相手のセンターに浅めのボールを返すだけで速いボールにはほとんど対応できていないのに、今のランキング(27位)にいられるのがすごい!と心から思いました。シコラーの星。

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ベサニー・マテック-サンズは試合でも孔雀色の髪、87年ウィンブルドン・チャンピオン、オーストラリアのパット・キャッシュのトレードマークだったヘアバンド等のファッションで観客を魅了。キャッシュは今大会チャンネルTENの解説者として会場にいたので、見ていたかもしれません。

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vs デンマークのミックスダブルスではウォズニアッキにサービスエースを献上し会場の失笑を買う等プレーに精彩を欠いたうえ、原因不明の騒ぎまで起こして顰蹙を買ったのはマーディ・フィッシュ(アメリカ)。

今大会彼にとって最後のシングルスとなったvs ディミトロフ戦(ブルガリア)では試合後、何事かディミトロフに苦言を呈するような場面が。続くミックスダブルスでもフィッシュは線審のいる方向へ唾を吐いたり、エンドチェンジで再びディミトロフとひと悶着。トーナメント・レフェリーが間に入る事態に。



シングルス終了後のインタビューでディミトロフは

「彼(フィッシュ)に聞いてもらう方がいいと思う。多分何か気に入らない事があったんだろう。僕が何か間違ったことをしたのなら、ロッカールームで次に会った時に謝りたいけど、この件についてはこれ以上何も言いたくない」

とコメント。

ホップマン・カップは国別対抗戦とは言えエキシビジョン。例年和気あいあいとして楽しい大会なのに、こんなに雰囲気が悪くなるところは初めて見ました。しかし、仲裁に入る半笑いのピロンコワには和みました。

ピロンコワはシングルスで3戦全敗。今週はホバートに出場。今日行われる1Rでは予選勝者のヘザー・ワトソン(イギリス)と対戦。

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決勝はそれぞれのグループで全勝したチェコとフランスの対戦に。

昨年ウィンブルドン優勝のペトラ・クヴィトワは、シングルスでピロンコワ、マテック-サンズ、ウォズニアッキ、バルトリを倒し4戦全勝。今週シドニーで優勝すればウォズニアッキを抜いて初のNo.1。しかし、クヴィトワは

「キャロライン(・ウォズニアッキ)はいいプレーをしているし、彼女はグランドスラムで何度か優勝できるはず」
「私が言いたいのは、女子テニスは開かれていて誰でも上位に行ける、ということ。去年は四大大会でそれぞれ違う選手が優勝した。だから私だけではなくて、全員に関係すること。同じ質問(No.1について)ばかり聞かれるのはクレイジーだけど、皆さんにとってはそれが重要なことなのも分かる。私にとっては問題ではなくて、私はただコートでプレーを楽しみたいだけ」

と語ったとか。

TENNIS.com - The Ticker - Kvitova close to No. 1 but downplays talk

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女子シングルスでチェコが先勝。続く男子シングルスはベルディヒが第1セットを取り、第2セットもベルディヒが2ブレークアップで5-1。ガスケが1つブレークバックし5-3となった第9ゲームは、ガスケのサーブながら0-40となり、チェコチームに3チャンピオンシップ・ポイント。

ここで何を思ったか、ガスケは突然ネジが外れたかの如くアグレッシブなスイングに。バックのダウン・ザ・ライン、フォアの超アングルショートクロス、センターからデュースサイドに逃げるエース、続けてセンターにエースとミラクルショットを連発し一気にアドバンテージ。フォアの強打をネットにかけてデュースに戻すも、続くポイントでベルディヒがリターンをネット。そして、2回目のアドバンテージでガスケはワイドへのサーブ&ボレーを華麗に決めキープ。ガスケの派手なプレーに、お客さんも一気にヒートアップ。この数ポイントを見られただけでも、この試合を見た値打ちは十分あった――そう思えるガスケ劇場でした。

結局次のゲームをキープされてベルディヒの勝利となりましたが、もしかしたら普段からこんな投げやり気味iなプレーで行けば、ガスケは新境地が開けるのかも?体力が続かなくて勝てない?そんなことどうでもいいじゃない!ガスケの格好いいとこさえ見られれば!!

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チェコの優勝は94年、ペトル・コルダ&ヤナ・ノボトナがドイツを下して以来2回目。



ベルディヒが密かに顎にヒゲを蓄えているのに、決勝の後初めて気が付きました。色が薄くて分かりにくい。優勝後自分の陣営に向かってガッツポーズをする彼は、今まで見たことがないほどうれしそうなものでした。

表彰式で司会者が終始妙に早口だったのは、生中継の残り時間との兼ね合いだった模様。

故ハリー・ホップマン氏の妻ルーシーさんが、今年もアメリカから来豪。御年91歳となった今もお元気で何より。
CropperCapture[63]





ホップマン・カップ名物、副賞のダイヤモンド・ボールを手に笑顔の二人。






フランスは92年に続く準優勝に終わったものの、結構いい雰囲気のガスケ&バルトリ。バルトリはガスケが負けた後もすぐ隣にやって来て労りの声をかけたり、スピーチではお互いを「ナイスパーソン」と褒め称える等これがまた結構いい雰囲気だったのですが、ま、まさか……。

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24年間ホップマン・カップの会場として使われたバーズウッド・ドームは今年が最後。来年からは現在建設中のパース・ドームに移って開催予定。

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そんな中今年の大会に影を落としたのは、ホップマン・カップの権利をテニス・オーストラリア(TA)が狙っている、という噂。

TAは、南アフリカ人で米イリノイ大学のヘッドコーチだったクレイグ・タイリー氏が選手育成担当として加わった05年以降、急速に中央集権化。国内のコートをプレキシクッションで統一、張替えに応じられないクラブはトーナメント開催の権利を剥奪すると通達したことに始まり、選手のマネージメントに進出、ジュニア育成やコーチング・システムの一元化、同国唯一のテニス雑誌の買収等を断行。豪テニス界の全てを一手に管理しようとするTAに対し、「我が国の伝統を軽視している」と反発するレイトン・ヒューイットや同国のレジェンド・プレーヤーたち、テニス関係者を巡る問題は、3年前テレビのドキュメンタリー番組で取り上げられたことも。

その中でも、特に険悪なのが元トッププレーヤー、ポール・マクナミー氏との関係。マクナミー氏は、自ら国内の僻地で暮らす子供たちにテニスの機会を与えるチャリティーを立ち上げ、06年まで12年間全豪CEOを務める等豪テニス界の発展のため精力的に働いてきた人物。ホップマン・カップでも創立以来24年間トーナメント・ディレクターを務め、毎年多くのトッププレーヤーを招聘、大会を成功させてきた実績があり、開催地パースの人々からも愛される存在。

TAは、ホップマン・カップと同じ週に男女共催のブリスベンを開催中で、今年女子はプレミアに昇格。これに伴い、ブリスベンではなくエキシビションであるホップマン・カップ出場を選んだトップ50のプレーヤーにWTAは罰金を課し、ウォズニアッキ、クヴィトワの10万ドル、リー・ナの7万5千ドルを含め罰金総額37万5千ドルは、全てITFが立て替えたそう。

TAは会場変更を機にITFから同大会の権利を買い取り、自分たちのやり方に従わないマクナミー氏をトーナメント・ディレクターから外すのではないか、と見られているとか。

TAが権利を持つことで、ホップマン・カップの開催地がパースから別の都市へ移動、あるいは大会そのものが消滅する可能性も取りざたされていることから、同氏の留任を求める嘆願書に観客1500人の署名が集まったとか。

ITFは、来年の同大会のマネージメントについて見直す意志があることを明言。TAは将来の大会の移動や終了については否定している、との事。

Hopman review could force McNamee out of the tournament
Public support strengthens for Hopman Cup director Paul McNamee | Perth Now

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ホップマン・カップは年の初めに、陸の孤島パースで、男女ペアの国別対抗エキシビという緩めのスタンスで開催されるからこそ値打ちがあるんですよ!毎年全豪を楽しませてもらえているのは陰にTAの働きあってこそ、と心から感謝しています。それでもこの件に関してはTAのバカバカバカ!!金の亡者め!!大っ嫌い!!!

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