日本では急遽この試合をテレビで生中継することが決まったと聞いたが、始まりは1時過ぎだったような。なんと時間ぴったりではないか。ミラクル。
試合でもミラクルを期待したいところだが、マレーと錦織くんではここまで勝ちあがるまでの試合時間数が違い過ぎる。とにかく今日は怪我さえしなければいい。ちょっとかっこいいところが見られればなお結構。
来た!
やっぱり遠いわ。
実は、今までマレーの試合はろくに見たことがない。試合を見ていても、途中で他のことに気が行ってしまうのだ。恐らく個人的に背が低くてキビキビ動く感じの選手の方が好みで、体格が立派なマレーはそこに入らないからかもしれない。それでも、ここまで錦織くんの対戦してきた選手たち、ロベール、エブデン、ベネトー、ツォンガと見てきた今ならはっきり分かる。この人の強さは別格だ。
どんなに左右に振られても長い足で追いついて、上体がぶれず滅多にミスをしてくれない。しかも、ペースに変化をつけたり、滅茶苦茶いいコースに返してくる。驚いたことには、錦織くんとプレースタイルがそっくりだ。知らなかった。
第1セット1-3で迎えた第5ゲーム、0-15からの錦織くんのまた抜きのロブ+ウィナーでは、ロブを予想していなかったらしいマレーがあわあわしながら下がる場面が何度見ても面白い。ところで、ウィナーで日本人は「ナイスショット」「ナイスサーブ」と言うがこれは和製英語らしく、周りの人は皆”good shot””good serve”と言っていた。でも、やっぱり「ナイッショー」と言ってしまう。周りのオージーから指摘されたことはないが、内心「それ違うよ」「ププ変なの」とか思われているのかもしれない。ちなみに「キープ」も同様で、英語では”hold”。
2-4で迎えた第7ゲーム、マレーのサービスゲームでは目の覚めるようなバックのジャックナイフのリターンエースを決める等、0-40とブレークバックのチャンスもあったが、第1セットは6-3でマレー。ああ、最初の1セットを見ただけでどっと疲れた。今日の錦織くんは決してスロースタートではない。マレーが強い。強いです。
私の後ろに座る年配のご夫婦はオージーだったが、試合の最初から錦織くんを熱心に応援している。ご主人は錦織くんがファーストサーブをミスする度に「チッ」と舌打ち。奥さんは錦織くんがウィナーを決めると”That’s my boy!”といった具合。そう言えば、4Rのツォンガ戦でも後ろの奥様グループが錦織くんのことを”My boy, My boy”と呼んで賑やかだった。錦織くんは「うちの子」扱いなのか。さらに同じくツォンガ戦では、立ち上がって錦織くんに向け歌を歌っていたお年寄りグループもいらっしゃった。皆さん日本人でもないのに、どうして錦織くんをそんなに一生懸命応援してくれるの?まあ、分かるけど。
応援と言えば、試合中錦織くんに向けて日本語、英語で様々な掛け声がかかる中で、
「落ち着けー!」
と聞こえてきた時だけは、つい
『お前が落ち着けや!!』
と心の中で突っ込まずにいられない。
第2セットは最初のゲームをブレークされてのスタート。次のゲームですぐブレークバックしたが、第3ゲームで再びブレークされた。錦織くんの気持ちが切れた様子はないが、マレーは甘くない。
マレーの5-3で迎えた第9ゲームは錦織くんのサーブ。一旦ゲームポイントを握りながら逆転を許し、マレーにセットポイント。センターに入ったセカンドサーブをマレーは叩いてネットへ。マレーのセカンドボレーを錦織くんはローボレーのロブでコート深くへ。マレーは何とか追いついてバックのダウン・ザ・ラインへ返すも、待っていた錦織くんがちょんと当ててアングルボレー。素晴らしい!何と面白いプレーをするのか。結局このゲームを落としてマレーの2セットアップとなったが、幸福感すら覚える。
第3セットも第2ゲーム、最初のサービスゲームでブレークを許したが、錦織くんもすぐブレークバック。しかし、第4ゲームで再びブレークされるという第2セットと似たような展開。第5ゲームはマレーがキープで4-1。会場で見ていた時はこの頃「さすがに疲れたんだな」と感じたが、今テレビで見たら錦織くんは苦しそうながらもめちゃめちゃ頑張っているのが分かる。
第6ゲームもブレークされ、マレーのサービング・フォー・ザ・マッチ。そして40-30となりマッチポイント。長いラリーからマレーがバックのアプローチをクロスに打ってネットへ。ファーストボレーをバックでアングルに落としたのを錦織くんがロブ。マレーはやはり追いついてバックでダウン・ザ・ラインに返してきたのを、錦織くんがフォアのボレークロスにちょこんと落としてウィナー。さっきのセットでもこんなの見たわ。相手のセットポイント、マッチポイントでこんな派手なラリーを演出してポイントを取る錦織くんは、やはり特別だと言わざるを得ない。
終わった。
錦織くんはプレーヤーズタオルを客席に放り込み、コートを後にした。気前がいいな。ヒューイットなんていつも3枚くらいバッグに詰めて帰るのに。
試合後のインタビューでマレーも語っていたが、面白いポイントの多くは錦織くんが持っていった。負けたけれど錦織くんは最後まで頑張っていたし、マレーの強さを知る機会も得たし、満足だ。
全豪観戦は今年で6年目だったが、予選2日目からDAY10まで通い詰めたのは初めてのこと。贔屓の選手が勝ち上がったら、グランドスラムはこんなにも楽しいものなんですね!錦織くん、信じられないほど素晴らしい時間をありがとう。これからも試合を楽しみにしています。
Men's Singles – Quarterfinals
Andy Murray(GBR)[4] def. 錦織圭(JPN)[24]
6-3 6-3 6-1
こみねさん こんばんは。
ReplyDelete観戦記、おつかれさまでした。
私も、以前マレーはあんまり面白くないプレイスタイルだなぁと思っていたのですが、去年の秋にジャパンオープンの決勝で見た時は、自身からも攻める「Newマレーが来た!」と思いました。
全豪のSF、去年よりはジョコビッチを苦しめた感はあったし、先日はドバイでジョコビッチを倒したし(フェデラーには負けてしまったけど)早くグランドスラムで優勝するところが見たいです。
錦織くんは、愛されキャラですね~。
そういうのは万国共通なのでしょうかね?「うちの子」にしたい気持ちは、とてもよくわかります。
りりりさん、観戦記を読んで下さりありがとうございました。
ReplyDeleteあんなに強いマレーでも、上の3人に割って入るのに苦しんでるんですよね。世界は広いですね。マレーのグランドスラムと言えば、フェデラーに負けて「僕はロジャーのように泣けるのに、彼のようなプレーはできないのが残念だ」と涙を流していた姿が今でも印象的です。近いうちにまたチャンスが来るといいですね。
錦織くんには、これからも世界中の老若男女ファンの心を鷲づかみにしていってほしいですね。