Friday 31 December 2010

全豪2011 ワイルドカード・プレーオフ 男子決勝観戦記

男子決勝は、第1シードのピーター・ルチャックと第2シードのマリンコ・マトセビッチ。世界ランクも137位と138位のガチンコ対決となった。ベテランが存在を見せ付けるのか、雑草育ちがのし上がるのか。これは見もの!そして、男子決勝だけは本戦と同じ5セットマッチで行われる。

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女子決勝が行われていた頃、隣りのコートではマトセビッチが練習中。相手を見ると、なんとトッド・ウッドブリッジだった。うわー!ウッドブリッジが打ってるところ初めて見た!すごく上手い(当たり前)!そして、フォームがすごく綺麗!

なんだ、引退後のウッドブリッジのことは結構な野心家だと思っていたけれど、エリート育ちでもないマトセビッチを気にかけてあげるなんて、もしかしていい人なのかも!なんて、簡単に騙される私。

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立ち上がりはいきなりお互いがブレーク。その後、マトセビッチが5ゲーム連取で6-1で第1セットを取った。ルチャックは第2セットの第1ゲームでようやくサービスをキープ。マトセビッチがキープした後、今度はルチャックが5ゲームを連取。1セットオールに。これは……フルセットにもつれ込みそうな予感。

空が再び暗くなり始めた。マトセビッチはしきりに黒い雲が流れてくる西の空を見上げている。そして、また一気に強い雨。今日はこれ以上外で続けるのは無理そうだ。プレーヤーズ・カフェで雨宿り。

壁のテレビで流れるMTVをぼんやり眺めて時間を潰していると、続きはインドアコートに移動して行うとの場内アナウンスが。

「……これって一般人も見せてもらえるんかな?」

インドアコートに向かう通路は知っている。以前普通にコートを借りて2時間くらいだったか打った。しかし、今日は選手や関係者がウロウロしているので心理的に入って行きにくい。全豪期間中は絶対に入れないプレーヤーズ・カフェでこうしてウロウロしているだけでも、実は落ち着かないのに。しばらく逡巡した挙句、ダーさんがプロショップのお姉さんに尋ねると、

「誰でも入れるわよ。そこから左に進んでいったらすぐ分かるから」

とあっさり教えてくれた。

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端のコートではルチャックが練習中。3番コートの周りには水滴の付いたプラスティックの椅子が並んでいる。スタッフの人たちが手分けして、わざわざ外から運んできてくれたらしい。感激。

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ライブストリーミング用のカメラ。

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足場をブルーシートで覆う。

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完成。

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マリンコ目の前!

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90分間のインターバルを挟んで再開。

それにしても、コートと同じ高さで見ていると、選手が尋常でないレベルでプレーしていることに気がつかずにいられない。物凄い回転のかかったボールが信じられないスピードで行きかったかと思えば、突然失速して前にポトリと落ちたりする。しかも二人とも拾いまくるし。全くどうなってるのかしらん、この人たちは。



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マトセビッチの地元のマイトと思しき男性二人組もこの試合を見守っていた。何故テニス絡みの知人でないことが分かったかというと、彼らはプレーヤーがそろそろプレーを始めそうなタイミングで客席に入ってきても決して急がないし、エンドチェンジでは徐に立ち上がると、マトセビッチに向かって「ちょっと外で茶しばいてくるからよ」みたいに手を口の前でクイクイッと合図をして出て行くわで、グランドスラム本戦の出場権を賭けた戦いの真っ只中にいる友人を見守る緊張感がまるで感じられなかったからだ。フリーダムな応援は、「スラムダンク」の桜木くんの連れのノリを思い起こさせる。

全く関係ないが、ニュースでメルボルンのイタリア系マフィアの人が出てくると、坊主頭に上下スウェット、首には金のネックレスという出で立ちであることが多い。日本のヤの付く人と同じで驚いた。国や文化は違えど、思想、信条(?)が似ていると、勢い装いも似てくるものなんですね。

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ファイナルセットは、ルチャックが1ブレイクアップで4-1。さすが常に全力を尽くす男、ピーター・ルチャック。先日の豪テニス・アワードで「スピリット・オブ・テニス」賞を授賞しただけのことはある。今日も豪No.2の厚い壁として、マトセビッチの前に立ち塞がるのか?!

マトセビッチは大事なポイントでミスをした自分にかなり腹を立てていたようで、エンドチェンジで今にもラケットを床に叩き付けんばかりの勢いで椅子に戻ってきた。私などは心の中で『これはついに投げる……投げるよ……』と大爆発に備えていたのだが、これも体を震わせながら耐え、バッグの上にやや強めに投げつけるに留めた。うおー、あの感情のフリーレンジだったマトセビッチが、いよいよ切羽詰ったこんな局面でも凄く我慢してるよ!感動せずにはいられない。そして、ここからが凄かった。

残念ながら細かいことはさっぱり思い出せない(なぜかテニス・オーストラリアからの動画も未だアップされていない)が、最後から2つ目のポイントでマトセビッチの放ったショット(フォアのダウン・ザ・ラインだったかなあ?)に鳥肌が立ったことだけははっきり覚えている。勝ったー!!マリンコ、実力でルチャックに勝ったよー!!!結局「ハイデ」は、この試合を通して控えめなのが2、3回出ただけだった。

ルチャックの敗因は、子供たちが見ていなかったから、ということにしておこう。いや、ルチャックは決して悪くなかった。どちらも全力を尽くした良い試合だった。

男子テニス界にあっては遅咲きの25歳。しかし、これからまだまだ何かやってくれそうな雰囲気を漂わせているマリンコ・マトセビッチ。いかつい外見の割りに、応援せずにはいられない愛すべきキャラクターを持つ彼の来年の目標は「トップ100入り」との事。来月は是非彼のプレーに注目してみてほしい。

オーストラリアのテニス界に一筋の光明が差し込んだのを見たような、そんな爽やかな気分でインドアコートの建物を後にすると、依然として曇り空ながら雨はすっかり止んでいた。

AO Men's Wildcard Playoff 2011 - Main Draw
Marinko Matosevic [2] - Peter Luczak [1]
6-1 1-6 6-3 4-6 6-4


Marinko Matosevic does it tough in wildcard playoffs at Melbourne Park | Herald Sun

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この後、テニス・オーストラリアが追加で発表したワイルドカードの選手は、準優勝のピーター・ルチャックとエレナ・ドキッチ。ベスト4の中からマシュー・エブデンとアリシア・モリックが選出。


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そんなこんなのうちに2010年ももうすぐおしまいですね。テニスブログらしく今年のテニス界で印象に残った出来事などを総括しようとしたのですが、どうしても真っ先に思い出すのは全豪男子シングルス表彰式で敗れたアンディ・マレーが

「僕はロジャーみたいに泣けるのに、彼のようなプレーができないのが残念だ」

と涙を浮かべたこの場面。


ナダルのキャリアグランドスラム達成とかもっと他にいろいろあったでしょうが!うーん、どうもまともな振り返りはできそうにないので止めておきます。

そして、明日からはホップマン・カップが開幕。2日からはブリスベン、3日からはオークランド、チェンナイの本戦がスタート。楽しみです!

このところ最高気温が20度台中盤を下回る日が続いて涼しすぎるくらいのメルボルンでしたが、大晦日の今日はいきなり40度を突破。ここが南半球であることを改めて思い知らされました。そんな熱風が全身を包む中、先ほど日本食材店で蕎麦とめんつゆとおもちを購入。少しでもお正月を迎える気分を盛り上げたいと思います。

今年も「テニをはまるまるムし」を読んで下さってありがとうございました。皆様、良いお年をお迎え下さい。


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