スケジュールではこの後引き続いてジュニア男子ダブルス決勝が行われる予定だったのだが、遅い時間になったせいか翌日に順延となった。おなかが空いたので、会場で晩御飯を済ませてから帰ることに。
ダーさんはカレー、私はシンガポールヌードルを抱えガーデンスクエアの向こうに巨大スクリーンを見通せる階段に腰掛けた。「ナダル vs ヴェルダスコ」の展開もそこそこにヌードルのあまりの不味さに閉口していた時のこと。いきなり後ろから
「あなたたち中で試合見たい?」
という声が聞こえた。振り返ると見知らぬ老婦人。あまりにもとっさの出来事に
"Yes!!"
と答えるのが精一杯。せめて"We'd love to!"くらい言えるようになりたい・・・。
それはともかく、まだ第1セットも終わっていないというのに気前の良いご夫婦は2枚のチケットを私たちに差し出すと「席はどこそこのゲートから入って右に進んで降りていったところだから」と付け足すやあっという間に立ち去った。ありがとう!あなた方に神のご加護がありますように!!
毎年一組はこんな感じで不要になったチケットをくれる人に出会う。おととしはボーダフォン(現ハイセンス)・アリーナ、昨年はロッド・レーバー・アリーナでナイト・セッション第2試合の女子ダブルスを見た。今年は男子シングルス準決勝。しかもゴールドの法人チケットだ。ワオー。
各ゲートに立つ係員のチケット確認を受け入場。熱気に包まれた場内を番号の示す方向に進む。想像していたよりかなり良い席だ。おまけにクッション付きときた。さすがゴールド。
ゲームは第2セット第4ゲームに入るところ。主審の"Time"のコールとともにナダルがこちらのエンドにやって来た。ナダルのすっかり薄くなった頭頂部に昨年のウィンブルドン、北京五輪と続いた激闘を思い返し少し涙。そして、ゲームがとんでもなく緊迫していることに気が付くのにそう時間はかからなかった。
実は、先ほどの食事中ナダルとヴェルダスコのどちらが勝つと思うか、という話になって
「相手がフェデラーだったらヴェルダスコも向かって行けたかもしれへんけど、ナダルとはデ杯のチームメイトやし、強さを知りすぎてるだけに勝てる気せえへんのちゃう」
とかそんな話をしていたほど試合の内容には期待していなかったのだが、想像以上にヴェルダスコがいい!一世一代の大勝負に全身全霊で挑む覚悟が見てとれる。ヴェルダスコにこれほどの底力があったとは。一方、それを受けるナダルはナダルで現世界No.1の本領を存分に発揮。かつてこれほどのクオリティの試合を現実に目にした覚えは、ちょっとない。
ところで情けない話、私の胃腸は極端に弱い。緊張する場面に遭遇すると決まってお腹が怪しい動きを始める。この日も心の準備がないままただならぬ雰囲気に接したことで、先ほどのゲロマズヌードルが素直に消化されなくなった。第4セットの途中までは
「もしもゲームの途中でお手洗いに駆け込むような事態になったらどうしよう」
「こんな緊張感溢れる試合の最中に、エンドチェンジ関係なしに移動してる奴なんていないよ」
とかそんな事ばかり心配していた。それなら早目に行っておけばいいではないかという話だが、これほどの上等の試合を一球でも見逃せようか。
試合開始から随分時間が経っても両者一歩も譲らぬ展開。鳥肌が治まらない。思わず声が出るスーパープレーの連続に、試合中にもかかわらず1万を超える人が立ち上がって賞賛を送る。テニスファンとしてそうそう立ち会うことのできない極上のゲームは、ヴェルダスコのダブルフォルトで思いがけない幕切れを迎えた。
クーリエによるオン・コート・インタビューを見届け会場の外に出た。時刻は既に午前1時半近く。タクシーで帰るつもりでいたが、既に乗り場には長い列。歩いて帰る方が早そうだ。
それもいいか。どうせ今夜は寝付けそうにない。
Men's Singles - Semifinal
Rafael Nadal(ESP)[1] def. Fernando Verdasco(ESP)[14]
6-7(4) 6-4 7-6(2) 6-7(1) 6-4
*****
帰り道でポッサムに遭遇。「かわいい」と写真を撮っていたら、人馴れし過ぎた都会のポッサムは「餌をくれ」と言わんばかりにどんどん近寄ってきた。
恐れをなして私の方から退散。
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