Tuesday, 15 April 2014

マイケル・チャン 錦織くんのコーチ業について語る

89年の全仏チャンピオンであり、引退から11年経った今年錦織圭選手のパートタイム・コーチとしてツアーに戻ってきたマイケル・チャン。tennis.comより彼のインタビューです。





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Q. ツアーに復帰したのは何故?

マイケル・チャン(以下MC): そうだな、チャンピオン・ツアーのイベントには定期的に出ていたんだ。去年は全仏と全米でもプレーした。この状況は少し独特なもので、通常なら普段は選ばない。でも、圭は今現在特別な立場にいる。言うまでもなくアジア系でもある。ツアーで成功したアジア系男子選手は多くないし、彼はトップ10入り目前の場所にいて、それは独特の状況であり、自分と似ている点もかなりあると感じたんだ。


Q. 圭のプレーに付け足せると感じている点は?

MC: 改善できる点がいくつかあると思っている。僕たちは二年前東京でエキシビションに出たんだけど、彼とはそれが初対面だった。その時は彼のメンタル面について少し話して、その後は去年の全仏で彼を見た。そして全米の頃、彼と一緒に仕事をする可能性について連絡を受けたんだ。

1月の全豪で見られたように既に良くなっている点はあるし、彼は正しい方向に進んでいて、それで自信も増して、プレーが良くなっていると思う。改善するのに時間があまりかからない事と少しかかる事があるけど、今のところはいい感じだ。


Q. 圭は素晴らしいアスリートで、ベースラインからの動きが非常に良い。となると、ビッグヒッターに立ち向かうためプレーにさらに攻撃性加える事になる?

MC: それは誰が相手かに依ると思う。誰に対しても同じスタイルのプレーはすべきではない。自分のスタイルを少しフレキシブルにする必要がある。相手によって少し我慢強くプレーする必要があったり、少し攻撃的にプレーする必要があったりする。少しペースを変えなければならない相手もいる。彼にちょっとした柔軟性を与えられれば、 一つのスタイル、戦い方でプレーするんじゃなく、異なったスタイルのプレーができるようになる。

彼のスタイルのベースは非常にしっかりしている。それが彼が世界のトップ20にいる理由の一部。でも、彼が倒して追い越したいと思っているトップ10の選手が相手なら、何か少し違う事、予測が難しい事をしなければならなくなるだろう。


Q. 彼にいくつか選択肢を増やすという事?

MC: ああ、それも含まれる。そういったことが、改善していき上達していくことに繋がっていって、そうすれば例えば彼が前に出てボレーを決める場面をもっと多く必要としたとしても、問題なくそう出来るようになる。


Q. あなたは男子テニス界で成功したアジア系選手が少ないので圭と組む事に惹かれたと話したけど、その原因は何だと思う?

MC: 女子テニスで一般的にとられるプレースタイルは慣れるのがやや簡単なので、高いレベルに到達し易いんだと思う。女子はより単調でフラット気味のボールを打つ傾向があって、そのレベルに合わせていくことは厳しいものじゃない。男子テニスは全く別物で、最高のレベルでプレーするアジア系の選手がさらに出て来るまでにはもっと時間がかかるだろう。


Q. 引退後、他の選手からアプローチを受けたことは?

MC: ああ、他の何人かの選手と組む話があった。ATPの選手ではなく、上のレベルを目指している若いプロ選手と。一緒に打つ機会があったもっと年齢の低い子供たちも何人か励ましてきた。でも、それは僕がフルタイムで取り組みたい事ではなかった。圭との仕事ですらフルタイムじゃない。僕にとっては、今の生活は家族と二人の幼い子供と一緒にいることにある。ツアーにはフルタイムで戻りたくない。でも、家族を連れてトレーニングや大きな大会の一部で働くことはできると感じた。


Q. また旅に出るようになってどう?

MC: 旅行はいいんだ。旅は引退後もしていたから、僕にとっては問題じゃない。より問題なのは家族。家族と離れたくないんだ。それに、自分のしていることに情熱を持ちたい。誰かを助けるために時間を割くことに価値を見出せなかったりいい関係を築けなければ、それは時間を割いてまでしたい事じゃない。現時点では、僕には自分のしたい事を選べる贅沢がある。


Q. コーチ業であなたの競争本能はどんな風に満たされる?

MC: コーチをすることが必ずしも競争的な面を満足させるとは思わない。 時々チャンピオン・ツアーでプレーするのはとても楽しい。何をするにしても、僕は負けず嫌いでい続けるだろう。テニスにしろ、ゴルフにしろ、何らかの競う要素があるものなら何でも。

コーチ業に関しては概して楽しんでいる。定期的に父や姪っ子のテニスを見たり、接触があった人々にアドバイスをすることもある。うまく上達させることができるのは面白いし、人がコートで笑顔だったり楽しんでいて、目を輝かせながら「ああ本当に助かったよ。随分いい感じだ」といった風になるのを見れば大きな喜びを得る。

もちろん圭に関しては最高のレベルにいるわけで、彼が向上して「良くなっている。良くなっていて結果にも現れている」と感じ、満足するのを見ることができるのは確かに満たされる。それは僕にとって本当にポジティブな事だと思う。


Q. コーチをする上で最も大変な面は?

MC: 最も大変なのは、時間がかかるって事だと思う。「もうちょっとボールに踏み込んで」と言えばすぐ出来て、その後二度と同じ事を言わずに済めばいいけど。 

残念ながら、全てのコーチ、全ての教師が言うように、反復もコーチングに含まれる。そして、それは時間がかかる。物事を繰り返してその人のプレーに沁み込ませようとしたら、根付かせるには時間がかかる。

これまで若い選手と関わってきた中で、こんな事があった。僕が何かアドバイスすると、彼らは非常に上手く適応して、それに納得した。それから1ヶ月くらい会わずにいて、僕が町に戻ると打ってくれと言う。ところがどうだ、彼らは僕が助言を与える前のプレーに戻っているんだ。

僕は「何があったんだ?君は僕が言った事を全くしていないじゃないか?」と言っても、彼らは自分でもよく分かっていない。だから、それが恐らく最も難しい事の一つだが、圭とはそうならないように願う。僕は彼とかなり頻繁に会っていて、ダンテ(・ボッティーニ。錦織くんのフルタイム・コーチ)も同様によくやっている。ダンテと僕は多くの点で同じ考え方だから、圭にはそれらの事を浸透させ続けてくれるだろうし、そこから僕たちは前進していくんだ。


Q. 圭のキャリアに関して、何を達成すれば二人にとってこのパートナーシップが成功したと言える?トップ10入り?グランドスラムの準々決勝進出?トップ10選手からもっと勝利を挙げること? 

MC: それらの全ての事の組み合わせだと思う。圭がトップ10に入れば素晴らしいが、同時に彼の成績がもっと安定してほしい。彼は時にはいい結果を出してきたが、年間通してのものじゃない。より多くの大会で勝ち、グランドスラムでいいプレーをして、もちろんトップ10の選手も倒すことでむらのない成績を残す癖をつけたい。

確かに以前よりはずっと近づいている。全豪ではラファ戦でたくさんチャンスがあった。第2セットでは1ブレークアップまで数ポイント、(第3セットでは)サービング・フォー・ザ・セットがあった。 


Q. ボリス・ベッカー、ステファン・エドバーグ、レンドルといった昔のライバルと共に、皆がトップレベルの選手のコーチとしてツアーに戻るのはどんな感じ?

MC: チャンピオン・ツアーで定期的に会うのと然程変わりはない。ステファンとはここ数年よく当たっていて、イワン(・レンドル)にもよく会う。 


Q. この数年レンドルがマレーのコーチとして残した成功は、あなたのツアーへの復帰を後押しする要因となった?

MC: そうでもない。もしそうだとしたら、僕は多分他の種類のコーチ職を求めただろうけど、何もしなかった。実際イワンの事は嬉しく思っている。彼とは非常にいい関係にある。僕は初めから二人がぴったり嵌ると思っていた。アンディーが通っていた道とイワンのそれは、他の誰よりも似ていたから。イワンがアンディーに次のレベルへ進む自信を与えることで助けたのは言うまでもない。でも、その事は僕がコーチを引き受けるかどうかには関係なかった。 

アンディーの成功は、もしかすると他の選手に昔の選手を雇うというアイデアを与えたかもしれないとは思う。(分からなかったので省略)


Q. 現在のトップ選手の中で、最も自分のプレースタイルを思い起こさせるのは誰?

MC: ダビド・フェレールとラファの組み合わせじゃないかな。とてもハードワーカーでとても勤勉、かつ激しさを持って全てのボールを追いかけるプレー。二人ともこれら全ての要素を持っていると思う。もちろん勝ちたい、相手に何も与えたくないという気持ちも持っているね。


Q. もしあなたが今の時代にプレーしていたら、何を変える? 

MC: そうだな、まず最初に道具の変化を確かめるだろうね!今の選手相手に昔の道具でプレーしたら、ボールが飛ばないだろう。無理だ。現代のラケットとガットで打ったボールはもっと速度が出てスピンがかかるし、ラケットもそれを可能にする。チャンピオン・ツアーですら古いテクノロジーは誰も使わない。今は僕らの全盛期には出来なかった事がいろいろ出来るんだ。


tennis.com - Returning to the Spotlight: An Interview with Michael Chang

5 comments:

  1. 初めまして、こんにちは。いつも楽しく読ませていただいています。
    チャンコーチのインタビューを訳してくださってありがとうございます。
    こちらの記事を、錦織選手応援ブログで紹介させていただいてもいいでしょうか。
    よろしくお願いします。

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    Replies
    1. みけさん、はじめまして。いつも読んで下さってありがとうございます。
      ご紹介して頂いて大丈夫ですよ。錦織くんの復帰が待ち遠しいですね。

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  2. 早速のお返事をありがとうございます。
    これからもこみねさんのブログを楽しみにしています。

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  3. 初めまして、きょんたと申します。マイケル・チャン氏が現在どんな事を念頭に置いて錦織選手のコーチをされているのか、とても知りたかったので、英訳していただき本当にありがとうございます。とても参考になりました。これからも楽しみに読ませていただきます!

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  4. きょんたさん、はじめまして。Twitterの方でお返事を送らせていただきました。
    錦織くんは既にパリで練習しているようですね。今夜のドロー発表が楽しみです。

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