Wednesday 26 December 2012

ヒューイット アルゼンチン勢とのバトル、フェデラー、ナダル、デ杯、怪我との戦い

レイトン・ヒューイットのロング・インタビューより。フッティーへの愛、アルゼンチン勢との険悪な仲、怪我からの復帰、フェデラー、ナダル、トミッチ等について語っています。

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Q. リッキー・ポンティング(豪クリケット代表前キャプテン)は今でもノース・メルボルン(注: オーストラリアン・フットボールのチーム)でプレーする夢を見ると話したけど、君も(アデレード・)クロウズについて似たような思いを持ったことはある?

ヒューイット(以下LH): ああ、彼がそんな話をしたとは面白い。僕は(元クロウズの監督)二ール・クレイグと自分のポジションについて話をしている夢を見たことが何度かある。それから目が覚めた。AFL(オーストラリアン・フットボール・リーグ)が大好きだ。


Q. あなたのコートでの情熱を我々は皆目撃してきたが、テニスを離れると君はとても静かな人間だという人もいる。どちらが本物のレイトン・ヒューイット?

LH:僕は二人の違う人間だ。コートで人が見る僕は自然な自分。感情をむき出しにする。ただ自分自身を奮い立たせるために、いつも”C’mon”と言う。コートの外ではもっとシャイだ。自分のチーム、家族、信頼する人々にくっついている。

Q. もしツアーの他の選手から一つショットを選べるとしたら?

LH: 僕のゲームには……(ジョン・)イズナーか(イボ・)カルロビッチのサーブだ。この二人はベストのサーブを持っていて、僕にあれば最高だろう。彼らのように全てのサービスゲームをキープできれば、僕のグランドストロークと合わせてどの大会でも脅威となるだろうね。

Q. 以前アルゼンチンの選手たちと熱いやりとりがあったよね?

LH: 今ではほとんど終わった。若いアルゼンチン勢は素晴らしい。(フアン・マルティン・)デルポトロはツアーで最も親しい友人の一人だし、フアン・モナコは素晴らしい奴だ。

Q. でも、ダビド・ナルバンディアンや(フアン・イグナシオ・)チェラといった面々とは本当に揉めた?

LH: 実際、全てはチェラが始めたことだ。僕が(01年)ウィンブルドン決勝でナルバンディアンに勝った時は何もなかったし、よく一緒に練習もした。(05年)全豪でチェラと当たった時、彼は僕につばを吐きかけた。彼は僕が観客を煽って”C’mon”と言うことに鬱憤が溜まっていた。その時僕は特に何もしなかったが、ロッカールームで僕のコーチだったロジャー・ラシードが、チェラや彼のコーチ、トレーナーに怒った。面白かったけど、その件は他のアルゼンチン男子にも影響した。

Q. それから?

LH: 2試合後、オーストラリア・デーに準々決勝でナルバンディアンと対戦した。最初の2セットは僕がとって、次の2セットは落とした。第5セットの最中、僕たちの肩がぶつかった。大したことじゃなかったが、ナルバンディアンは「何をした?」と言う風に振り返った。二人とも止まることはできたかもしれないが、歩き続けた。ファイナル10-8で僕が勝って、以来彼とは話をしていない。

Q. 話しかける予定は?

LH: ない。多分絶対しない。僕は彼をそれほど好きじゃない。彼についてはいくつか話を聞いたことがある。フィジオが同じでいろんな事があったんだ……今までで一番きつかった移動は、デ杯でアルゼンチンに行ったことだ。あれは容赦なかった。

Q. 対立関係によってやる気が起こる?それとも不快感を覚える?

LH: 時にはより火をつける。デ杯のベストの試合のいくつかはアウェイで、いつもより集中できた時だった。でも、観客の半分が自分につばを吐いてくる状況では難しい。

Q. 長く活躍したアスリートの多くが引退する時には全身ボロボロだけど、君は大丈夫?

LH: 多分大丈夫じゃない。おそらくほとんどのテニス選手より多少いろいろと経験してきた。年をとるにつれ全身が痛む。パット・ラフターは上半身全体だったけど、僕の場合は臀部、膝ときて、今は足。

Q. 最も深刻な箇所は?

LH: 足だね。メルボルンでいい手術を受けられてラッキーだった。世界中の4、5人の外科医と話をして、基本的に言われたのは諦めろということだった。手術を受けてもプレーを続けるのは無理だろうと言われた。その手術を受けて復帰したアスリートは他にいなかったけど、僕はそう言われたらむしろ復帰して、みんなが間違っていると証明したくなるところがあるんだ。


Q. テニス界での薬物については?どんな問題がある?

LH: 一、二回ばれて、半年や一年で戻ってこれることに不満を感じている人間もいると思う。マリアノ・プエルタ、アルゼンチン人だけど、(05年の)全仏で大会全てを台無しにした。彼は大会通して薬を使っていて、素晴らしい選手を倒した。決勝に出てナダルに負けた。良かったよ。少なくともふさわしいチャンピオンは得た。

Q. プエルタはどうなった?

LH: 18ヵ月後に復帰した。それは彼の二度目の違反だった。不正をしていない全員が苛立った。もっと厳しく取り締まるべきだ。

Q. ノバク・ジョコビッチは君を含めて多くのトッププレーヤーの真似をするけど、面白いと思う?

LH: ああ……うーん、彼は面白い奴だけどあまり親しくないんだ。ロッカールームでも冗談を言い合ったりすることはあまりない。彼はセルビア人やクロアチア人とよくつるんでいるから。

Q. ロジャー・フェデラーはどんな人?

LH: いい奴だが、彼と本当に親しい人間はいない。彼は誰からも距離を置いている。でも、僕は彼といつもいい関係を築いてきた。

Q. トッププレーヤーで特に親近感を覚える選手はいる?

LH: いる。(ラファエル・)ナダル。彼はプレーを見たり、一緒に練習したり、全てにおいて僕の一番好きな選手だ。全豪決勝でジョコビッチと対戦した彼の試合で解説できたことは、僕にとってはさらに素晴らしいことだった。ラファは勝ち上がる中で体の状態と戦っていたが、史上最高の試合の一つだった。彼の不屈の精神は素晴らしい。

Q. 君は彼(ナダル)について、ボールを打つ前から闘争心を露にすることで対戦相手を威嚇すると話していたように記憶しているけど、どう?

LH: ああ、彼は自分のタイミングでプレーする。エンドチェンジでは常に遅れて立つ。ネットでコイントスの時ですらジャンプしたり、闘争心剥き出しだ。その後ベースラインに駆け足で戻り、これは一般の人が気づかないことだけど、ウォームアップで他の選手よりハードに打ってくる。大きな存在感を生み出すんだ。

Q. そうすることで何か違ってくるの?

LH: もちろん。ロッカールームで勝敗が決まることは多い。彼がどんなに強いか、ウォームアップの時点から頭に叩き込まれる。彼を倒すにはそれに4時間耐えなければならない。つまり、コートに足を踏み入れる前に、既に負けているんだ。でも、だからこそ僕は彼が好きだ。「自分を倒すなら殺すつもりで来い」ってことなんだ。

Q. 今まで対戦した試合で、相手が最高レベルのテニスをしたと思った試合はある?

LH: ある。両方フェデラーだった。僕がセットを落とさず決勝まで進んだ04年全米では、決勝でストレートで負けた。彼は素晴らしかった。もう一つは全豪のナイトセッション。彼をコンフォートゾーンから引きずり出すことができなかった。

Q. 君はゲームにかなりの情熱を注いでいるけど、バーナード・トミッチの最近の状況については?

LH: 彼にとっては辛いことだ。今年の彼はプレッシャーが大きかった。ツアーの2年目は、まだ知られていなかった最初の年よりも難しくなる。ウィンブルドンで勝ち上がって準々決勝に進んだが、翌年は誰もが彼のことを知っていて、どうプレーすればよいか分かっている。それで彼はポイントを守ることにプレッシャーを感じた。そういうことが雪だるま式に襲い掛かった。彼にとって最も大事なことは、頭の中をすっきりさせてラケットに喋らせることだ。

Q. 彼は切り抜けられると思う?

LH: 彼は既にそうしている。ツアーで50位台にいる。どこまで行けるか?分からない。彼にとって良いことは、結果を残している若い選手は多くないということだ。僕は16歳でツアーにいた。ナダルは15歳で、リシャール・ガスケ、サフィン、フェデラー……近年グランドスラムでセカンド・ウィークに進んだティーンは彼らが最後だ。

Q. あなたは対戦相手について科学捜査的な知識を持つことで知られている。そういう知識があるのは素晴らしいことだけど、絶好調のフェデラーを前にして『よし、じゃあ次は対ロジャー・ゲームプラン、22番のa……』みたいなことがあったんじゃない?

LH: ああ。彼は解答集を持っているんじゃないかと時には思う。彼は予想するのが一番難しい。バラエティー豊かだから。他の選手には狙える弱点がある。ロジャーはバックハンドの調子が悪ければスライスを使い始めるし、そのスライスは世界最高だ。

Q. デ杯チームを去る時、自分がキャッシュ、ラフターと繋げてきた鎖を断ち切る立場になることを心配している?

LH: 少しはね。パット・ラフターも同じ心配をしている。彼が望むことなら自分は何でもすると彼に伝えているが、クレーで手術後となると3日間連続でプレーするのは難しい。それは心配事だ。(ジェームス・)ダックワース、ベン・ミッチェル、マット・リードを助けようとしている。何人かいるけど、大きな進歩を見せている人間は一人もいない。

Q. 大抵のプレーヤーにはアイドルがいるけど、君には?

LH: 特にはいなかった。パット・キャッシュが好きでマッツ・ビランデルが大好きだった。両親と全豪に行って、スウェーデン人ファンに応援されるビランデルをよく見ていたし、彼のプレースタイルは僕と似ていて、自分とよく比較したもんだ。

Q. 長くプレーし続けるのに役立っていることは何かある?

一つのことではなく、スケジュールが重要だ。僕は多くの大会に出場するタイプではなかった。世界No.1にいた時ですら、限られたスケジュールでプレーした。いい成績を出せると感じた大会だけプレーした。キャリアの前半は大きな故障がなかった。ここ4年では手術を5回受けた。

Q. 今でも緊張する?

LH: もちろん。でも、それはいい事だ。 どれだけ自分が勝ちたいと思っているかという証拠だから。


Lleyton Hewitt talks footy dreams and on-court rivalries ahead of the Brisbane International   Herald Sun

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P1050115相変わらず冷戦中らしいヒューイットとナルバンディアンですが、来年の全豪オフィシャルプログラムの選手紹介のページでは、ランク順により仲良くお隣り同士(画像左上)。何者も二人を完全に引き離すことはできないのです。そういう運命なのです。

ヒューイットの2013年はブリスベンからスタート。

4 comments:

  1. 興味深いインタビュー記事ありがとうございます。

    フェデラーが誰からもある程度の距離を置いているというのは、なんとなく納得。もちろん彼を嫌っている選手はいないでしょうけど、でも必要以上に親しくはなれないって感じですかね。

    しっかしラファのことはホントにお気に入りなんですねー
    「自分を倒すなら殺すつもりで来い」なんて言う選手を、だからこそ好きだというヒューも相当なファイターですねえ。

    個人的にはナルとヒューは、いったんわだかまりがとけたら、案外仲良くなれそうな気がするんですけど……このインタビューを読む限りでは無理っぽいですね(笑)

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    Replies
    1. momoさん、こんにちは。

      いきなり訂正させてほしいのですが、「殺すつもりで来い」の部分はナダルが実際にそう言っているのではなく、そう言っているようなもの、という意味合いのようです。失礼しました。

      ところで、momoさんから以前ヒューイットが全豪の解説でどのような話をしているかご質問頂いていたのにずっと紹介できないでいたのが心残りだったので、この場を借りて少し――

      今年の男子決勝のこと。第2セットに入った直後、ジム・クーリエがインプレー中に話し出し、ヒューイットに話を振ったところヒューイットは無言。ポイントが切れたところで会話が再開して、ちょっとこの間のやりとりは忘れたのですが、クーリエが「だってまだ第2セットが始まったばかりだよー」と言うと、ヒューイットが「全豪は全てのポイントが重要なんだ」と切り返したことがありました。ちょっと面白かったです。

      ついでに、ヒューイットについてこれまでできなかった話も付け加えていいですか?彼の友人ピーター・ルチャックが今年の全豪をもって引退しましたが、彼が現役最後の試合を終えた後、ヒューイットがテニス・オーストラリアの関係者を集めてサプライズのお別れ会を催したそうで、そのビデオが2月のデ杯のライストの中で流れました。ルチャックはちょっと怒った風に、でも涙声で「サプライズは嫌いだ」とコメントしていたのが印象的でした。

      あと、ルチャックが最後の年ということで一緒に全豪のダブルスに出場、2Rでブライアン兄弟にストレートで敗れたのですが、その第2セットタイブレーク終盤、試合の流れがどちらに転んでもおかしくなかったポイントで白熱したラリーとなり、後ろにいたルチャックがエンドラインぎりぎりに入ったボールをフォアで打とうとして、派手にがしゃるミスをしました。これが致命的となり試合が決まったわけですが、「何でもないボールに見えたのに、変なミスだったな」と妙に心にひっかかるものがありました。そして何度かビデオを見返しているうち、ふと「ああ、ルチャックはヒューイットをシングルスに専念させるために、わざとミスをしたのかもしれない」と思い始めました。信頼する人間にとことん尽くすヒューイットを、これ以上自分に付き合わせるのが心苦しかったのではないかと。あくまで私の主観ですが。

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  2. おお、ヒューの解説情報ありがとうございます!
    2013年の全豪でも解説する予定のようですね。日本なのでヒューの解説者っぷりが見られないのは残念ですが。
    ヒューのインタビューなどを動画で見ると、ぜんぜん噛まずに流暢に、即答してますよね。たぶん頭の回転も早くて、解説者向きなんだろうなーと思います。

    さらにルチャック君とのエピソードも、本当にありがとうございます!
    とてもいい話……ヒューは本当に熱い男なんですねえ。

    確かに故障持ちのヒューにとって、シングルスとダブルス両方に出るのは負担だったでしょうから、ルチャック君のそのプレイはもしかしたらご推察の通りだったのかもしれませんね。
    真相は誰にも分からないことながら、有りうる話かなと私も思います。

    ラファはまだ万全の状態ではないようですが、彼も早くコートに戻ってきてほしいですね。
    互いに相手を殺す勢いで(笑)ヒューと戦ってほしいです。

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    1. ルチャックが弾いた瞬間、前衛にいたヒューイットがルチャックを振り返った時の驚いた顔が忘れられません。もしかしたら気が付いていたのか?分かりませんが。

      ヒューイットの解説者としての評判は上々なのですが、早口でかなり突っ込んだ話をするため私はリスニング面でもテニス面でも付いていけず、なかなか内容をご紹介できず心苦しく思っています。

      ナダルのエキシビ復帰はお預けになってしまいましたね。となると、もしかするとクーヨンで空気を読まずに全力で戦う二人が見られるかもしれませんね。いや、さすがにそれはほどほどにしておいた方がいいと思います。

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