Monday, 17 December 2012

全豪2013 ワイルドカード・プレーオフDAY3観戦記 (その2)

マシュー・バートンとニック・キルギオスの試合を見るために5番コートへ。

Nicholas_Kyrgios10月の大阪スーパージュニアで優勝、現在ジュニア世界ランク4位のニック・キルギオスは17歳。前週行われた国内18歳以下の大会で優勝し、プレーオフのワイルドカードを獲得。同大会初出場だった昨年は、1Rで当時270位の21歳マット・リードと対戦。リード目当てで試合を見に来たはずだったのに、キルギオスのテンションの高さと勝負への執着心に目を奪われるうち、試合もキルギオスが勝ってしまって驚いた。これは同時期の日本で例えると、内田海智選手が杉田、守屋両選手辺りに勝ったようなもの。

キルギオスの今年のプレーオフは、1Rで第1シードのサミュエル・グロスと対戦。ストリーミングで見たところ、強風で生命線のサーブに苦しむグロスと対称的に、ベースラインの後ろから一振りで錦織くんばりのウィナーを奪う等キルギオスの思い切りの良さが目立ち、結局17歳が第1シードを破る番狂わせ。キルギオスは2年連続で格上の選手を下しての準々決勝進出となった。

Matthew_Barton427位のマシュー・バートンは第8シード。見た目の割りに意外と若く、まだ20歳。

試合を見始めたのは第4セット途中から。キルギオスは、自分のサービスゲーム2つでバートンにブレークポイントを握られる苦しい展開。しかし、粘っていずれもデュースに持ち込みキープに成功した。勝負どころのポイントを決めたり、ジャッジに疑問を覚える度大きな声を出す。主審にクレームを付けることも度々で、一見集中を欠いているようにも見えるのだが、その直後に冷静なプレースメントでポイントを取ったりするのだから侮れない。サーブ良し、フォア良し、ドロップショットも巧み。これまで見てきた試合と同様、ジュニアだから今回は経験を積もうとか、先週優勝して疲れているからこの辺で、等の打算が全くないキルギオス。相手が誰であろうと、常に「勝つ!」という意気込みに満ち満ちている。これほど勝利への意志が明確なプレーヤーは、100位を切っている選手ですらなかなかお目にかかれるものではない。第4セットはタイブレークへ。終盤までどちらに転ぶか分からない展開だったが、キルギオスが7-5で取りセットイーブンに。決着は第5セットへ持ち越されることに。

ところが、第4セットで試合を決められなかったバートンは、完全に意気消沈してしまったようだ。あれよあれよの間にキルギオスが2ブレークアップとし4-0。第5ゲームのバートンのサービスゲームも0-40。誰もがキルギオスの勝ちを確信したその時――

一つ前のゲームからキルギオスはしばしば足を伸ばす様子が見られたが、ついにエンドライン上にうずくまってしまった。疲労の蓄積と暑さに17歳の身体が耐え切れなくなったらしく、全身の痙攣でひどく苦しんでいる。

動けないキルギオスに主審はトレーナーを呼ぶか確認。大人二人に抱えられベンチに引き上げた。痙攣ではメディカル・タイムアウトを取れず、チェンジオーバーの時間内でしか受けられないため4-1、それでも治まらずさらにトリートメントを受けるため4-3となり、ここでキルギオスはリタイアとなった。

それにしてもすごいものを目撃した。心構えだけなら、いつプロに転向しても問題ないだろう。おまけに、ドラマを生み出す素質まである。豪男子テニス界に一筋の光明が差し込んだ試合だった。


2013 Australian Open Wildcard Playoff
Men’s Singles Quarter Final
Matthew Barton [8] def. Nicholas Kyrgios
7-6(3) 3-6 6-3 6-7(5) 3-4 Ret.

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