主役の登場。錦織くんは昨年秋にマスターズ1000上海ベスト4、バーゼルでは世界No.1ノバク・ジョコビッチを倒しての準優勝と好成績。今大会は堂々の第24シードとしての出場とあって、日本人ファンが大勢詰めかけたスタンドは、まさに「All eyes on 錦織」の様相。
今日も風が強い。
相手は106位のステファン・ロベール(フランス)。
ロベールと言えば2年前、今は亡き南ア・ヨハネスブルグの250の大会で、29歳で106位ながら準決勝でダビド・フェレールを下し、初めてツアー決勝に進出した出来事が印象的(決勝ではフェリシアーノ・ロペスに敗退)。ロベールはそれより前肝炎を患い、当時は15ヶ月に及ぶ闘病生活を経て復帰して半年経った頃。その時の彼のコメントが以下。
「僕はこれまでずっとクレージーなショットを打ち、ビッグ・ショットに賭け、目を閉じてただボールが入ることを祈るような、自分が呼ぶところの『カジノ・テニス』をしてきた」
「去年(09年)の8月、病気の後テニスに戻ってきた時、僕のコーチ、ロナン・ラフェと長時間話し込んだ。彼は違うやり方をするよう僕を説得した」
「一度に一つの事をするのに集中し、以前より集中力を高め、より正確なプレーをするよう、彼は求めた」
ベテランが遠回りしてようやく見つけた自分のテニスの話に、心温まったものだ。
Feliciano Lopez, Stephane Robert make unlikely Johannesburg final - ESPN
トスアップから正面を向き、体重移動のほとんどないロベールのサーブ。サーブってこれでいいんか……。ロベールは自分の最初のサービスゲームでダブルフォルト2本等でブレークを許し、なかなかに最悪の出だし。
錦織くんですよー。明らかに体つきがひと回り大きくなっている。オフのトレーニングが効いているのだろう。
第1セットは錦織くんペースで進み、ネット近くで高くバウンドしたボールを日本のテレビが呼ぶところの「エア・ケイ」で叩きこむ場面も。今では余裕がある展開の時にしか見られなくなったショットだが、やはり見た目が派手なのでお客さんは一気に湧き上がる。
ところで、私の真後ろに陣取っていたのは、地元のお兄さんと思われる3、4人組。随分とテニスに詳しいらしく、
「アシュリー(・バーティー)は負けたのに、(全豪ワイルドカード・プレーオフでバーティーに負けた)オリヴィア(・ロゴウスカ)とケイシー(・デラクア)がまだ残ってるとはな」
「何が”New balls, please.”だ。子供を奴隷みたいに使ってるんだから、『プリーズ』なんて要らないだろ。HAHAHA」
などと延々おしゃべり。試合中に話し続けるお客さんは正直苦手なのだが、このお兄さん達の話はなかなか興味深い。このコートには錦織くん目当てでやって来たらしく、錦織くんのこれまでの主な戦績をざっとおさらいしながら、
「錦織、めちゃくちゃ良くなってる」
「強えよな」
「当然だ」
などと感心しきり。錦織くんが6-1でファーストセットを取ると“Easy. Too easy.”。錦織くんがウィナーを決めれば、“That’s my KORY!”と大盛り上がり。
第2セットに入ると、ロベールは徐々に本領を発揮。錦織くんの6-5で迎えた第12ゲーム、ロベールのサービスゲームで30-15。ロベールは錦織くんのフォアで右に走らされた後、次のバックで大きく左へ。ロベールが走りながら必死に返したバックはダウン・ザ・ラインでコートの隅ギリギリに決まりウィナーに。この時、錦織くんはボールが落ちた場所を見届けると、ロベールに背を向けたまま親指を立てる仕草を見せた。今まで見てきた中で相手の良いショットを讃える表現が最もエレガントだと感じたのは、相手をしっかり見つめながらラケットを少し掲げ、手のひらの下側でガットを「ポン、ポン」と叩いていたセバスチャン・グロージャンだったが、錦織くんもなかなかいい線を行っている。
第3セット。ロベールは第2セットに全力を注いで力尽きてしまったのか、危なげない展開で錦織くんが6-0で取りゲームセット。
試合後は錦織くんを囲む人人人。
錦織くん、まずは初戦突破おめでとう!次も頑張って!!
Men's Singles - 1st Round
錦織圭(JPN)[24] def. Stephane Robert(FRA)
6-1 7-6(7) 6-0
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