Wednesday, 13 March 2013

絶好調ガルビス 復活インタビュー

2週間前デルレイビーチで予選から勝ち上がり、2年ぶりとなるツアー3回目の優勝。136位でスタートした今シーズン、2ヶ月で67位まで一気にランクを上げたエルネスツ・ガルビス。

先日、米ニューヨーク・タイムズ紙のサイトに彼のインタビューがアップされました。インディアンウェルズの予選後に行われたもので、内容は再び競技への意欲を取り戻した経緯、今年に入ってからの練習、過去の夜遊び、これからの目標等について。彼らしい率直な語りでなかなか興味深い内容だったので、拙訳ですがご紹介したいと思います。

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10連勝だね。今どんな気分?

エルネスツ・ガルビス(以下EG): 疲れた。

こういう大会の両方で予選に出るのは、あなたにとっては短期間でいろいろあり過ぎ?

EG: 予選に出るのはいいもんじゃない。疲れるだけで、試合は本戦と同じくらいタフだ。多くの選手は本当にいい選手だし。だからタフだけど、それはそういうもんだ。今は自分のランクを戻しているところで、もうすぐ本戦に入れるようになればいい。

あなたが試合に勝っていた頃、トップ100から落ちる前はチャレンジャーや予選の出場は考えていなかったことだと思うけど、その点は上手くやっていると思う?

EG: (笑)僕は以前トップ100から落ちたら戻るのはかなり厳しいと言ってたけど、そんなに厳しくないとみんなに証明した。かなり簡単だよ(笑)。

トップ100転落の鍵となったのは?

EG: 鍵となった瞬間?(笑) 十分な練習をしなかったこと。コーチを変えたこと。システムを持たなかったこと。よくあることさ。基本的には、そうだな、大きな秘密じゃない。もしいい練習をすれば、ハードに練習すれば結果は付いてくるもの。もし練習しなければ、結果は付いてこない。それほど単純なものだ。十分な練習をしなかったら落ちた。それでも、トップ100から落ちるのは本当に辛い。なぜなら(100位以内なら)ほとんどの大会で本戦からプレーすることになって、そうするといくつかの試合に勝つことになるんだよ。それでいいんだよ。それだけで300ポイントくらい入るから。

あなたがいい練習をしていなかった時どんな感じだった?良くない練習ってどういうこと? 

EG: コートで良くないわけじゃなかった。僕がコートにいる時はいつもハードに練習する。自分がコートに出れば、それは練習の準備が出来ているということで、だからって100%の力を出すわけじゃないんだけど。(いや)コートにいる時は100%を出すんだけど、つまり練習のやり方、どんな目標を持っているかということ。一度いい練習があっても、何かを得られるわけじゃない。堅実に何週間、何ヶ月もいい練習を続けなければならなくて、今のところ僕はそうしている。オーストラリアでプレーしなかったから、準備期間が長かった。それで1ヶ月間計画的な良い練習ができた。それが今報われている。これまでで一番フィットだ。いいテニスをしている。まだ直すところはあるけど、もし強い選手に何回か勝てたら、その時はもう一定の選手には負けないレベルにステップアップする瞬間になると思う。

あなたは全豪予選でシードが付くランクにいたので驚きではあったけど、オーストラリアをスキップした甲斐はあったようだね。

EG: もちろん今振り返れば助けになった。難しい決断だった。なぜならキャリアには限りがあるし、グランドスラムをスキップすることは大きな決断だった。でも、オーストラリアは遠すぎる。そこへ行くには何もかもが高い。予選に出てもいくらにもならない。まず行くのに1万ドルかかって、元が取れるかどうか分からない。それでオーストラリアに行く代わりに、そのお金を自分のビルドアップに回すことを選んだ。(オーストラリアに出ていたら)どうなっていたかなんて誰にも分からない。

こんなに早く結果が出て自分でも驚き?

EG: ああ、デルレイビーチでも話したけど、コーチは4月にトップ100に戻ると言ったんだ。だからこんなに早く実現してコーチはとても喜んでいる。もちろん自分でもちょっと驚いてる。マルセイユで、その試合は負けたんだけど、ベルディヒといい試合をして、翌朝4時に空港に行ってアメリカに来て、1回練習して、次の日は予選だった。滅茶苦茶だった。準備も全くできていなかった。何も。でも試合は勝った。プレーは全然良くなかった。本当にひどかった。予選の1回戦は少し楽だったけど、それからは厳しかった。トップ100にいたマルチェンコ、200位台にずっといるモルチャノフに勝った。彼らを倒さなくてはならなかった。それでも用意はできていて、ああ、上手く事が進んだのはありがたかった。

キャリアは短くて、グランドスラムをスキップするのは大きな決断だったと君は言ったね。時間を無駄にしたとか、もっとましなキャリアを築けたのにとか、過ぎた事を後悔することはある?

EG: ああ、でもその決断をしなければ得られなかった経験を、今僕は持っている。この経験を見返りなしに何かと引き換えにしようとは思わない。なぜなら、ツアーに出てニューカマーになれば、すぐに誰もが本当に優しくしてくれるから。ニューカマーで、ひょっとしたら大スターになるかもしれない。エージェント、友達とか誰もが近づきたがる。今では僕はニューカマーだったことも、消えかけの選手だったこともある。そして今は戻ってきつつあるからいい経験だ。いろんな立場にいた。トップ10には入ってないけど、いい成績はいくつかある。大きな大会でいい所まで残ったことがある。グランドスラムのベスト8やマスターズの準決勝。だから近い所まで行ったことがある。そこまでステップアップしてそこで留まりたい。

あなたがどうやってお酒や煙草を止めたか、それが今助けになっていることを話したロッテルダムのインタビューを見たけど、そういうものがどれほどあなたの発展を妨げていたと思う?

EG: それは、僕は自分がヘビースモーカーだったとか、大酒飲みだって言ってるんじゃないんだ。僕は普通の若者だ。でも、プロのアスリートであるには普通の若者では駄目なんだ。もう少し自分のする事に気をつける必要があって、僕はそれをしていなかった。外出して、酔っ払って、ちょっと吸ってた。ちょっとっていうか、煙草やマリファナだ。残念ながらテニスプレーヤーには許されていない。正直僕には何故だか分からないんだけど。でもそれは僕の意見だ。今は全部止めて、健康的な生活を送っている。いつまで続くか分からないけどね(笑)。結果が付いてくれば続けるつもり。そして今は結果が出てる。本当だ。報われてる。

あなただけでなく他のプレーヤーでもお酒や煙草は問題になっていた?

EG: いや、周りを見ても誰もそんな事してない。本当。

あなただけ?

EG: 僕をツアーのアル中にみたいに(笑)。いや、それも事実じゃない。もちろん出かけるのが好きな人はたくさんいる。でも分からない。皆それぞれ生い立ち、どう育ったか、何をしてきたか、どんな仲間と付き合ってきたかは違う。僕の仲間には面白い奴、楽しい人がたくさんいて、実際スポーツマンの仲間というのではなかった。そして、自分だけが最初に思い立って酒も飲まず11時までにベッドに入らなければならなくなったら、もうその仲間の輪にはいられない。朝の3時まで起きてないといけないから。

ということは、常にスポーツ、スポーツ、スポーツの隔絶された環境にはいなかった?

EG: ああ、僕はミュンヘンのニキ・ピリッチのテニス・アカデミーにいた。でも、そこの練習相手にクールな友達がいた。練習する時は練習していたけど遊びたい時期で、物を覚え出す16歳から遊び始めた。自分たちなりに楽しんでいた。その事を悪いことだとは思っていない。バランスをとっていただけ。まだ続けている人間もいる。ワインを一本空けて徹夜しても、そんな事は大したことじゃない。みんな自分の人生に何が必要で、何が目標かを理解しているかってことで、それが全てだ。そして今僕は理解している。まだ僕は自分をかなり若いと思ってる。僕は24歳で、それに気づかず一生を終える人もいるかもしれない。だから、僕はいい決断をしたと思ってる。

自分の行いで悪影響があった?それが目を覚ますきっかけになったの?

EG: いや、ただのフラストレーション。僕はツアーではもう長い。若いけど長くいる。始めたのが早かったから、ツアーではベテランのような気分。毎年同じ大会に行くのにフラストレーションを感じる。プレーする選手、優勝する選手を見ていて、もし自分がいいプレーをして全ての事を正しく行えば、優勝する選手にも勝てると分かっている。なぜなら優勝する選手、僕よりランクが高い選手の何人かより自分の方がいい選手だと本当に信じているから。信じているから、今度はそれを証明し始めなければならない。特に自分自身に対して。そしてそれが、そうだな、きっかけのようなものだった。それをするかしないか。なぜなら、僕の目標は世界50位になることや、キャリアで50位から100位の間に留まることじゃない。何のために?そういう事には興味がない。だから、分からないけど多分あと4、5年やってみる。それで終わり。そうしたら後悔しないだろう。

忘れることができない、やる気を起こすきっかけになった負け試合はあった?

EG: いいや、特には。ただ年の終わりにランキングを見たら、自分は130位だった。僕は年末にチャレンジャーにいくつか出た。最悪に気が滅入る場所、暗い冬のドイツで。きつかった。ATPツアーとチャレンジャーは大違いだから。選手の扱われ方が大違い。例えば予選か本戦かでも大きな差がある。ここは大きな大会だから違うけど、もっと小さな大会では扱われ方が違って、僕はそれが好きじゃない。大会中はプレーヤーのことをきちんと扱ってほしい。僕が分からないのは、例えば昨日僕のコートにはホークアイがなくて、今日はあった。何故だか分からない。全員に同じルールを適用するか、そうでなければ大会じゃなく違うイベントにしろと。誰かが説明してくれたら理解するかもしれないけど、分からない。

自分はコーチするのが簡単な選手だと思う?

EG: だと思う。尊大に受け取られたくないけど、コーチは僕みたいにポテンシャルがあって僕のようなテニスをする選手は多くないから、コーチできて本当に幸せだと言った。コーチをするのが簡単な人間じゃないのは確かだと思う。僕は多分楽なキャラクターじゃない。時々頭の中で統合失調症的なことを考える。それでも僕はコーチをするのが面白い選手だ。大きいところで勝てるから。僕はそう思うし、コーチもそう思っている。

「大きいところで勝つ」――グランドスラムってこと?まだ考えてる?

EG: それが僕の夢なのは確かだ。それが、グランドスラムで優勝することがテニスにおいて僕の最高の夢なのは間違いない。

トップ4の圧倒的な強さの下で、5位から20位の選手の中には全てを勝つ夢を時に諦めてしまったじゃないかという風に見える人もいる。それは当たっていると思う?他の選手が信じることを止めても、君はまだ信じている?

EG: 分からない。いい質問だけど、僕は実際のところ分からない。自分について言えば、たくさん疑っているのは確かだ。僕を見てみろ。まだ大きな勝ち星はない。ただ3回優勝して、僕のキャリアはアップダウンがある。でも、誰が武器を持っていて誰が持っていないかを知るのは簡単だ。練習でのボールの打ち方。速いショットを持つ人がいて、バウンド後のボールがとても重くて、スピンをたくさんかけてプレッシャーをかける人がいる。ただボールを打って走っているだけで何もしていない人もいる。僕に言わせれば、そういう人は大きいところでは決して勝てない。トップ4の選手はボールが最も重い。だから彼らはあの位置にいるんだ。

最近あなたのショットで変化があったのはフォアハンドのようだけど? 

EG: ああ、随分変わった。

どうして変えることに?

EG: 今のコーチ、ウィーンのギュンター・ブレスニクに付いてもらった時変えたくなった。そして彼には自分が若かった頃のようなプレーがしたいと話した。もっとリラックスしたスイングでもっとアグレッシブに。彼も同意してくれて取り組み始めた。フォアハンドをアグレッシブにすることに全ての注意を払って、他のことは気にしなかった。フェンスに当てたか?当てた。でも問題ない。アグレッシブでスイングの感覚を失わないこと。辛かった。僕は元々ショットがころころ変わる方なんだ。すごく簡単に変わる。例えば1週間プレーしないでいて、ラケットを持つと違うショットを打ち始める。それに慣れてくると、また変えたくなる。だから、いつも自分がしている事に集中する必要がある。

フォアハンドであなたの左手はあなたの正面、顔の前に飛び出るけど?

EG: その事はあまり考えていない。自然なものだ。でもスイングそのものは前よりリラックスしていると思うし、ショットにパワーもある。だからそれは良いけど、まだ完璧じゃない。いくつか改良する必要がある。

これから数ヶ月はどうする?この2週間はもちろん素晴らしかったけど、この先はどうなると思う?

EG: 正直今の感覚は好きじゃない。何試合かの間に少し不安を覚え始めたから。なぜなら、自分で試合に勝てることを分かっていて、この大会でももっと先へ行けると正直分かっている。そして、その感覚が好きじゃない。少し不安になり過ぎて、それでコートで感情的になり過ぎるから。自分では考えたくないし、ここ3ヶ月してきたことをただ続けて、どうなるか見たい。それを続けたらたくさんチャンスがあるから。プレッシャーをかけ過ぎたくない。いつも「OK、今この週がやる時だ」と思っている。そうすると期待が大きくなる。期待が大きい時、失望感は半端ない。がっかりすることが何度もあって、期待をしたくなくなった。起こることは起こる。それでハッピーだ。

いいプレーをしている時の方がプレッシャーを感じて、それはチャレンジャーでプレーしたり130位以下にいた時には感じなかったもの。だから、もっと勝っていくべきだと感じるのは良いこと?

EG: いい事だ。でも、もっと楽なやり方で対処したい。不安やフラストレーションを覚えたくない。ラケットを壊すのは好きじゃない。コートで感情的になるのは好きじゃない。ただ起こることで、それと付き合うことを学ぶ必要がある。

でも、あなたはラケットを壊すのは得意だよね。ただ投げるだけで壊れる。

EG: ツアーで僕がベストなのは間違いない。特別なテクニックと少しのパワーだ。

それは練習で何とかなるもの?

EG: ウィルソンから50本ほどラケットを貰う。そして、それをいつも壊し続けてる。

For Ernests Gulbis, a Fast Climb After a Steep Fall - NYTimes.com

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gulbis_coronaこちらはコロナのイベントより。「彼がどこの出身か知ってる人?」の質問に「ラトビア!」と答える声多数。ガルビスが「どこにあるか知ってる?」と尋ねると「ヨーロッパ!」。そりゃそうだ。



ガルビスはインディアンウェルズ本戦でも1RでF-Lo、2Rでティプサレビッチ、3Rでセッピを下し連勝は13に。13日の4R、vs ラファエル・ナダル戦は注目です。

2 comments:

  1. こんばんは~♪
    いつもブログ楽しませていただいています。
    以前もコメントさせていただいたことがあると思うのですが・・・

    グルビスの和訳インタビューありがとうございました。
    以前はかなり興味がありましたが、ちょっとがっかりしていたところでした。
    しかし大変身を遂げようとしている最近の彼の活躍はとてもうれしいです。

    私のブログにこちらのリンクを貼らせていただきました。
    不都合がありましたら、削除致しますので仰ってください。
    よろしくお願いします。

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    1. Amelieさん、こんにちは。いつも読んで下さってありがとうございます。以前コメントいただいたことも覚えていますよ。

      リンクもありがとうございます。昨日のナダル戦は惜しかったですが、大きな口を叩くだけのことはあるプレーは見せてくれたように思います。言う事が面白い人なので、これからも是非目立つところにい続けてほしいですね。

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